面堂敬太郎の活動録

徒然なるままに、趣味について書き綴っております

メガネ奇譚

皆様こんにちは、面堂です。

本日はいつもの作品紹介と打って変わって箸休め(箸休めにしてはボリュームがでかすぎる)程度に二次創作小説を書き留めておきます。

さて、もったいぶらずに何の同人を書くんだい?

言ってごらんよ、旦那!

では恐縮ながら…

何を隠そう、そう、あの、うる星やつらメガネ主人公にした大々スペクタクル冒険活劇(これは嘘)であり(これも嘘)の全米号泣必至(もうこれで全てお察し)同人小説なのだ!

以下、小説本文へ移行するが、そこにおける思想信条一切はメガネのものであり、わたくし面堂とは一切関係ないということを留意されたし。

 

「メガネ奇譚」 メガネ 著

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 上の写真は紛れもない私である。では、私は誰か?メガネである。では、私は何者だ?友引高校の一介の高校生であり下駄履きの生活者、並びに立ち食い師の道を進まんとする者である。私は何を所望しているのだ?

何もない…

いや、ラムさんへの愛だ。勝ち取るべき愛だ。ブルジョアに搾取されてはならない愛だ。

しかし、これから紹介する一切の事は虚構の現実。いささか矛盾めいてるが、この国の民衆皆がその虚構の中にあって、かつそこに自身を投影している普遍的な生活を意味する何かである。

1984年○○月☓☓日 朝食 青菜、焼き魚。

白米、味噌汁なんてのは真理なのである。だから正規の記載はこれだけでよい。

今は暑いから多分夏だろう。玄関を出るとそこにあるのはただの軒先の猫とこれからの運命を決定付けるであろう陽炎、そして嗚呼我が麗しの青春生活通学路!

私は電車通学経てからの徒歩通学であるので、満員電車内の闘争という何の意義も満たさない闘争に青春の1ページを費やさなければならなかった。しかし、収容所の監視状態から抜け出た後の悲壮感、それらが相まって日々強情さを鍛えさせてくれる。それが満員電車というものだ。

登校時には必ず我が同志パーマ、チビ、カクガリと遭遇する。遭遇方法はこうだ。まず我が家の軒先でパーマと遭遇。相変わらず資本主義的文明にその身を置き、快楽を謳歌している不届き者だが、ラムを愛する気持ちは十二分であり、また私の良き理解者である。そして二人は満員電車へ特攻。名誉の戦死を遂げた後、通学路にてチビ、カクガリに何の脈絡もないまま遭遇。特に”暗闇のわれに家系を問ふなかれ漬物樽の中の亡霊”と言わんとするが如く悲惨な生活を強いられた継子のような形相をしたチビが私に必死のパッチで抗議してくる。彼は毎晩毎晩ラムに対する成し遂げられない愛情に憤りを隠せず、恐らく不眠症の類であろう、どこの誰に向けられているかすらも分からない嘆願混じりの恨み節を演奏してみせるのだ。私はそれを一蹴する以前に、「このスカポンタン!」と拳骨を脳天へ一発。これで万事解決である。こうすれば彼は寺山修司の出来損ないから元のチビ助に戻るのである。カクガリはいつも登校時には♨先生と見間違えてしまうので、これまた一苦労である。正直、言ってチビ、カクガリはモb…

ー検閲により該当部分削除ー

あーっ、もういい分かった!大切な同志は革命を動かす原動力!万国の労働者は団結せなばいかんのだ!それに、彼らを蔑ろにしては私のラム親衛隊最高幹部会議長のポストも危うい。

以下、日常の如し。よって、割愛。

私は一日の労働の疲れを同志とのばかばかしい世間話で昇華させながら帰宅の途についた。私はパーマと別れた後、数分歩いた時に私の丁度三尺先の電信柱にもたれかかる一人の英国紳士風の、黒マントでこうもりの如く肌身を覆い隠し、ステッキを持ってハットをかぶり、無精髭を生やした原田芳雄風の、どこか不吉な笑みを浮かべている食えない男がこっちをじぃーっと見ているのに気づいた。

彼との距離が近くなるにつれ私は憔悴しきって、その黒マントの男を一瞥するやいなや対抗心が即座に芽生えてきたのであろう。彼とのかけっこは刹那の内に開始された。すぐ近くの街角にある立ち食い蕎麦屋に駆け込むと二人は暗黙のじゃんけんで注文する前後を決定し、開口一番月見そば。初手は黒マントだった。「くぅ〜」と私め一言申し上げますと、もはや後の祭りで只々「天ぷらそば!」と否応なしに一言。いや、この勝負俺がもらったぁぁぁ!黒マントの眉毛がぴくりともしないうちに私は「オヤジぃ、紅生姜の天ぷらいっちょ!」と放った。そう、この立ち食いそば屋は関東圏ではもはやエスニック料理の扱いを受けつつある関西料理としてのそば屋であったのだ。ここの親っさんはそば道一筋このかた半世紀の大ベテラン!おまけに関西そば流儀を極めし者であるが故に彼の御法度に反した場合は容赦なくその鉄槌が下される!私はその事を知っていて敢えて駆け込んでいったのだ。紅生姜の天ぷらは無論、関東圏には無縁の代物。黒マントの動きやいかに。黒マントは立ち上がった。そしてこれまでになかったオオグチボヤのような形相をなしてひと欠伸。おまけにあのヒトラーユーゲントも真っ青のハニカミ笑顔に見事なナチス式敬礼をしながら、「紅生姜天ぷらひとぉつ!」と鬼畜の剣幕で放った。親父もそれに呼応するように「あいよぉ!」と放ったが、私は頬杖をつきながら余裕ある態度でこの駆け引きを見守るのだ。紅生姜天ぷらは間もなくして出来あがり、1秒たりとも誤差はなく同時に手元へと到着した。しかぁし、何という迂闊私は到着した出来たてほやほやの紅生姜天ぷらを既にお仲間が入居しているそばの中へチャポリ。天ぷらそばに別個で頼んだ天ぷらをチャポリしたことが問題なのではなく、紅生姜天ぷら単体を味わわないことが死活問題であったと認知する前に、私の視界は逆鱗に触れられた親っさんの拳骨に埋め尽くされ、逃亡を試みようと横を向いた瞬間、頬骨にきついジャブを一発お見舞いされた。この一連の動作に”デュクシ”なんて稚拙な効果音は似合うはずもなく、寧ろ私の”ヒデブッ”(いや違った)絶叫で十分だった。御法度破りの返答としての刑を執行した親っさんは私が正気を戻した時には既に定位置にて自分の人生を歩んでいた。正気に戻った私は黒マントの方を真っ先に見た。黒マントは黙々と紅生姜天ぷらをかじっていた。この勝負、彼の勝ちだ。私は悔し紛れに勘定を済ましてさっさと出ていこうと思った。すると黒マントは私が正気に戻ったのに気がついたようですっくと立つと勘定をさっと済ませ、気づけば私のすぐ目前に立っていた。次の瞬間、彼はそれまでこうもりのように身に纏っていたマントを翻して内なる秘密の全容をさらけ出した。なんと彼はマントの下に何も纏ってなかったのだ。つまり素っ裸なのであって、彼はただの露出狂でしかなかったのだ。

………

なんちゅう、災難じゃあっ!わざわざ私に見せつけるために蕎麦屋まで入っていったのか!第一、男に向かってすることではなかろうに!”メロス、君は真っ裸じゃないか”なんて美談を語るに値しない所業ではないか!

「さだめじゃ」

あぁーっ、だまらっしゃい!ヒョウタンツギの如く現れるこやつは全く…

ギッチョンチョン!

第一話 完